嘘のつき方 - Thailand Fiction 7

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「Kit!どこに行ってたの?!!!」 Farはいきなり入ってきたKitにそう叫んだ。
  「まだ寝てると思ったよ。携帯なくして探しに行ってたんだ。Spoonにあったよ」 
帰るタクシーの中で考えた言い訳をさらりと言った。
こういう時はあまり多くを語ってはいけない。詳しく話すとボロが出る。そう自分に言い聞かせ、言い訳の補足をしたい衝動をぐっと我慢した。数秒の沈黙がやたら長く感じる。何か話さなきゃと思った瞬間・・・「心配したじゃない。起きたらいないんだもん・・・」 Farが細い声でポツリと言った。

心がKitに抱きつきたいと欲するが、目の前には昨日と別Kitがいた。目から微笑みが消え、言葉には甘い響きがない。そんなKitを見ていると少しづつ冷静さが戻ってきた。気弱なハートが消えいつものFarが蘇る。ふと昨夜のKit身勝手さを思い出す。
「出かけるくらい言ってもいいじゃない!」
  「言ったさ!でも泥酔してただろ!」 
思いがけない強い調子のFarの言葉に、少し感情的にKitは応えた。
「そんなの聞こえなかった。酔ってるのわかってるんだからちゃんと起こしてよ!やるだけやって出かけるなんで勝手過ぎるんじゃない!しかもここどこよ!私のアパートに送ってくれんじゃなかったの!エアコンないしマイサバーイ!!」 Farは感情を一気にぶちまけた。
  「エアコンなしで悪かったな!俺には日本人のスポンサーなんかいないしな!」 
「なによそれ!」 Farの怒った目から涙が溢れ出す。
「帰る!」 Farは急いで服を着、取るものをとって飛び出して行った。

言い過ぎたと思いFarを追おうと思ったがKitは思い止まった。Farを失うかもしれないと思ったがAorを失うのは絶対いやだった。冷静に嘘をついたのが良かったと思った。可哀想だったが、Farが勝手に出て行ってくれたのだ。結果論だが思いがけない展開に安堵した。あまり時間がない早く女の痕跡を消そう・・・Kitは気持ちを切替え部屋を掃除し始めた。

★Back Number
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by Sukhumvit_Walker | 2008-09-05 22:00 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

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