孤独の旅路 - Thailand Fiction 8
2008年 09月 11日
出社したが悶々として仕事が手につかない。10分毎に電話するが留守電メッセージがむなしく流れるだけだ。アシスタントの子もいらいらに気づいたようでよそよそしい。触らぬ神に祟りなしってところか。
ジュンイチとFarが出合ったのは3年前だった。その頃ジュンイチの生活は荒れていた。名古屋からの単身赴任は2年目に入り、妻との間に溝ができ、単身というより別居生活になっていた。東京本社に転勤が決まった時、子供はまだ小6だし家族で引越すもの思い込んでいた。しかし子供の転校の影響と足が悪い実家のお母さんのリハビリを手伝うことを理由にやんわり断られた。妻とは名古屋支社での職場結婚であり最初は人が羨むようなカップルだった。だが子ができ、妻が実家に入り浸るようになってから少しずつ歯車が狂い始めた。
東京で生活を始めて見ると意外にも妻の呪縛がとれ単身を楽しんだ。本社での仕事は新しいタイでのプロジェクトが主で、バンコクは2ヵ月に1度程度行った。タニヤやMP遊びもその時覚えた。オキニも出来、擬似恋愛とわかっていてものめり込んでいった。でも楽しみは長く続かなかった。1年半経つとプロジェクトの仕事は現地法人に移行され終了し出張も無くなった。オキニに会いたくて半年後プライベートで会いに行ったが、次いつ来るの?って聞かれた時、年に何度も来れない現実を認識した。
妻から突然離婚を迫られたのはそんな時だった。改めて考えたら、多忙とバンコク出張を理由に、ここ2年で4回しか名古屋に帰っていなかった。たまに帰る名古屋には自分の居場所はもう無くなっていた。妻にはリハビリ施設で知り合った男がいる様な気がしたが、もうどうでもよかった。生活から妻子の存在が消えていた・・・離婚にはすぐ応じなかったが、もう心は名古屋には無かった。
ふと孤独を感じた・・・家族も女もいなくなった。寂しさを紛らわすため毎日飲んだ。銀座や新宿の女に癒しを求めた。でも何かが違った・・・バンコクが懐かしかった。
気がつくと上野のタイスナに毎晩通うようになっていた。タイ語の響きが心を癒してくれた。ある日夜遅く寄ると新しい女がいた。小顔で目が大きく色っぽい唇をしていた。それがFarだった。
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by Sukhumvit_Walker | 2008-09-11 19:00 | Thailand Fiction