ファースト・インプレッション - Thailand Fiction 11

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お店に出て2日目、訳も判らず客とアフターしてホテルに行った。お金を貰おうとしたら客は怒り出した。翌日ママからものすごく怒られた。「ママとは付き合い長いから正直に言うけど、昨晩あの新しい女とホテルに行ったんだ。俺が誘ったんじゃないぜ。あの女から誘ってきたんだよ。お金を払うなら行かないって言ったら、あなたが好きだとしつこく言うんだよ。いい女だしかなり酔っ払ってたしな。成り行きで行ったんだよ。そしたら事が終わってから金をくれだって・・・よく日本語分かってない感じだったし3万小遣い渡したけどね。でもやめさせた方がいいよ。売春宿と間違われちゃうよ」客からこんな電話があったという。

ペナルティーとして新たに10万の借金ができた。今度やったらクビだという。愕然としているとPloyが出勤してきて罵声を浴びせた。「あなた私の客と寝たでしょ!この泥棒猫!」ここがタニヤとは別世界なのを初めて実感した。落ち込んでしょげているとPingがやって小声で囁いた。「あなた馬鹿ねぇ。もっと上手にやりなさい・・・Ployだってママにばれないように同じようなことやってるんだから。でも他人の客は絶対取ったら駄目よ・・・」
お店の女の子はみんなライバルだった。可愛い顔をして優しそうに見えても、裏ではあらゆる手を使い利権である客の奪い合いをしていた。ただ笑ってホテルに行くタニヤとは違い、自分のすべてを武器にしないとお金は稼げなかった。

この事件以来Farは店でもアパートでも女の子からよそよそしくされた。陰口を言われるだけでなく、数人の客が店で露骨に身体を触りホテルに誘ってきた。じっと耐えるしかなかった。クビになったらお金ばかりか住むところさえない。がんばろうと努力したが、なかなか接客のコツはつかめなかった。指名がない日々が続いた。焦り、苛立った・・・経済的にも行き詰まりタイへの送金どころじゃなかった。ふとCatに会いたいと思った・・・日本のどこかに彼女はいる。少しでも心を許せる誰かが傍に居てほしかった。何もかもがいやになり逃げ出したい気持ちだった。そんな時ジュンイチと出合った。

日本語しか話さない他の客と違いジュンイチは少しタイ語を話した。ジュンイチは他の子のうまい日本語より、Farの片言の日本語とタイ語が混ざった会話がバンコクみたいでいいと喜んだ。Farの心は久しぶりに晴れた。小太りな体形に高そうなスーツ、腕にはローレックス・・・お金持ちとFarは思った。ヨレヨレの服を着てカラオケを歌い飲んだくれてる他の客とは明らかに違った。ハンサムじゃないが、良く見ると眼鏡の奥から愛嬌のあるやさしそうな小さな瞳が微笑んでいた。このお金持ちを放しちゃいけない・・・これがジュンイチへの第一印象だった。

そこまで回想した時、我に返った。決心し携帯の電源を入れジュンイチの番号を押した。何か言われたらとにかく謝るしかない。あのやさしい小さな瞳はきっと許してくれる・・・今までもそうだったように。

★Back Number
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by Sukhumvit_Walker | 2008-10-03 13:17 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

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