涙の名演 - Thailand Fiction 12

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いつもと同じ様にしなければ・・・Farは呼び出し音が5回鳴ったところで電話を切った。10分程でコールバックがあるはずだ。ジュンイチとの電話はいつもそうだった。3分経っても電話は鳴らない・・・いつもは気にしない時間が長く感じた。ほどなくタクシーはアパートに着き、Farは携帯を握り締めたまま部屋のベットに腰掛け待った。

午後のミーティングが始まった。昼休み電話をしたが留守電のままだった。もういいやと思っても携帯に目が行く。仕事に集中して忘れよう。そう思い携帯をポケットに入れようとした時、突然携帯が震えた。Far?・・・ジュンイチは期待してディスプレイを覗いた。Farだ!それまでの苛立ちがうそのように消え安堵すると同時に、今度は強烈に電話をしたい衝動に駆られた。ミーティングは始まったばかりだ。しばらく我慢していたが居ても立ってもいられなくなり、30分後にトイレと言って中座した。急ぎ外に出て電話をする。Bodyslamのメロディがまどろっこしい・・・

もうかかってこない?そう不安を覚えた時、着信を知らせるBodyslamの曲が部屋に響いた。落ち着かなきゃ・・・そう自分に言い聞かせ10秒程待ち電話をとった。
「ハロー」Farがそう言うなり、ジュンイチは一気に思いのたけをまくし立てた。
 「一体どこに行ってたんだ!電話をクローズドにしてるし!誰と一緒だったんだ!」
 「昔みたいに男と一緒なのか?今度はタイ人か?日本人か?おい!聞いてるのか?」
ジュンイチの罵声を聞きながらFarは勝ったと思った。悲しいことを思い浮かべ、ただ電話ですすり泣いた。しばらくすると案の定ジュンイチの声のトーンが変わった。
 「おい!Far泣いてるのか?どうしたんだ?Far・・・泣くなよ」
「ごめんなさい・・・」それだけ言いまたすすり泣く。
 「ごめんなさいって・・・男と一緒だったのか・・・」ジュンイチの声は明らかに狼狽していた。
「うぅん、ただ悲しい。ごめんなさい・・・あなただけなのに・・・夜の女だったからやっぱり信じないのね・・・悪いことしてなくても信じてもらえないのね。愛しているのに・・・」
少し間を置きか細い声でFarはそう言った。

★Back Number
ファースト・インプレッション - Thailand Fiction 11

暗黒への旅路 - Thailand Fiction 10

イージー・マネー - Thailand Fiction 9

孤独の旅路 - Thailand Fiction 8

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モーチットの再会 - Thailand Fiction 6

チェンマイの宝物 - Thailand Fiction 5

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スワンナプームの光景 - Thailand Fiction 1


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by Sukhumvit_Walker | 2008-10-09 11:03 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

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