カテゴリ:Thailand Fiction( 16 )

 

昔馴染み - Thailand Fiction 16

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ジュンイチの疑いが晴れFarは安堵したのか空腹を覚えた。外へ出ていつもの屋台でセンレックを食べ腹を満たすと、ビューティーサロンに入りシャンプーをしてとマニキュアを塗ってもらった。
さっきまでの喧嘩していたことなどすっかり忘れおしゃれに没頭した。
サバーイ、サヌック、マイペンライが彼女の価値基準であり、いやなことはさっさと忘れ、楽しいことだけ考える楽天的タイ人の典型だった。

身ぎれいになると気分は晴れ、オカマのSomchaiに電話した。
「ねぇ起きてる?今日仕事終わったら遊び行こうよ・・・」「OK!いつもの店ね・・・」
Somchaiとの付き合いは長い、Farより5つ上の彼は、同郷ということもあり最初にタニヤで働いた時から妹みたいに面倒を見てくれた。何でも相談できる唯一の友達だった。
日本から帰ってから、今の店であるスクンビットのSoi33の店を世話をしたのも彼だった。ジュンイチは当初反対したが、飲むだけでデートはしないことで納得させた。

タクシーに乗り少し早めにに店に行くとタグチがいた。
「あら珍しい・・・どうしたの?日本じゃなかったの」
タグチと逢うのは半年ぶりだ。いつも忘れた頃ひょっこり顔を出す。
  「久しぶりだね。飯でも食いにいくか?」
「ご飯なんで食べに行ったことないじゃない。いつもやるだけじゃない」
「こんなおばちゃんとまだやるの?(笑)」

そう話しながらFarは私服で席についた。

飲むだけといってもお客は結構誘ってくる。一晩10,000バーツと言って来る客もいたが、新しい客とは絶対にホテルには行かなかった。そこまでリスクを犯してジュンイチを失いたくなかった。Farがジュンイチを裏切るのはジュンイチより古い馴染みの客であり、Farの立場を理解している1人の客だけだった。その唯一の客がタグチだった。
タグチは性格があっさりした紳士だった。Farとはセックスだけの関係・・・決して感情を移入してこなかった。Farもタグチに無理は頼まなかった。それがむしろ友達感覚でお互いに心地良く、気がついたら10年も続いていた。

★Back Number  
マイサバーイ - Thailand Fiction 15

魔性の微笑 - Thailand Fiction 14

疑わしきは罰せず - Thailand Fiction 13

涙の名演 - Thailand Fiction 12

ファースト・インプレッション - Thailand Fiction 11

暗黒への旅路 - Thailand Fiction 10

イージー・マネー - Thailand Fiction 9

孤独の旅路 - Thailand Fiction 8

嘘のつき方 - Thailand Fiction 7

モーチットの再会 - Thailand Fiction 6

チェンマイの宝物 - Thailand Fiction 5

ラチャダーピセークのシャワー - Thailand Fiction 4

留守電の疑惑 - Thailand Fiction 3

ハリウッド・アワードの酔っ払い - Thailand Fiction 2

スワンナプームの光景 - Thailand Fiction 1


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by Sukhumvit_Walker | 2008-11-24 18:13 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

マイサバーイ - Thailand Fiction 15

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Kitから将来結婚したと言われた時、Aorは微笑みを返しただけった。彼がしたくてもきっとお父さんが許さないわ・・・心の中でそう呟いた。結婚なんて・・・まだまだもったいないわ。
Aorの予想どおり父親は結婚に反対した。お金持ちじゃない・・・それが反対の理由だった。Kitはクルンテープ行けばなんとかなると思いチェンマイを出た。Aorにとってはすべてが好都合だった。大学に行って言い寄る男たちと楽しく過ごした。今度は見た目だけじゃなくお金持ちかどうかもチェックした。付き合っても飽きてくると捨てていった・・・まるで服を変えるかのように・・・それがAorのやり方だった。

Kitはきれいに片付けた部屋でうきうきしながらAorを待っていた。夕方5時を回り連絡があるまで、少しベッドに横になろうと思ったのがいけなかった。昨夜の疲れのせいか睡魔に襲われ眠りに落ちた。突然、携帯が鳴った・・・Aorだ!
「バカヤロー!何やってるんだ!Kit!もう10時だぞ!・・・無断欠勤か!」電話からはハリウッドのマネージャーのBirdの罵声が聞こえた。
  「すみません。寝てました・・・すぐ行きます・・・」
電話を切ってから頭が回り始めた・・・Aorは?携帯をチェックしても着信はなかった。
いくらなんでも遅すぎる。荷物はここにあるし・・・Aorに電話をしても着メロが流れ留守電になるだけだった。3度目の電話で留守電にメッセージを残しKitは仕事に出かけた。Aorから連絡がない不安とBirdの怒った顔が浮かび、一気に気持ちがマイサバーイになった。

★Back Number
魔性の微笑 - Thailand Fiction 14

疑わしきは罰せず - Thailand Fiction 13

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by Sukhumvit_Walker | 2008-11-08 18:02 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

魔性の微笑 - Thailand Fiction 14

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Aorは夕暮れのシーロムにいた。就職はそんなに甘くはなかった。チェンマイのユニバーシティは所詮田舎の学校だった。プライドが高い彼女には耐え難かった。
Aorは子供の頃から何でも思い通りにならなければ気がすまなかった。流行の物は何でも学校で一番最初に手に入れた。周りの人々は彼女の天性のおねだり上手の前に成す術もなく頷く・・・澄んだ瞳と微笑みが魔物だった。愛らしいマスクの下には強欲を隠していた。

あの時もそうだった。ハイスクール最後の年は何でも彼女の思い通りだった。成績も、スポーツも、ファッションも・・・文化祭のイベントでは当然の如くミスに輝いた。
まるでプリンセスのような日々を送っていたある日、Aorはチェンマイの街角を仲良く手をつないで歩くファランのカップルを見た。「なんかいい・・・絵になってる、幸せそう」消えかかっていた羨ましいと思う気持ちが一気に高まった。
「私もああして歩きたい・・・もうすぐロイカトーンだし」そう思うと友達のNunに電話をした。
「イケ面で背が高い子知ってる?・・・ああKitね。目立たないけど確かにまあまあいい顔ね」
あとは簡単だったNunに「Kit!あなたもてるわね。Aorがあなたのこと気に入っているわよ。ロイカトーンに誘ってみれば・・・」と言わせればいいだけだった。

Kit とはそうして始まった。恋人というより連れて歩くアクセサリー兼召使だった。Aorが愛したのは自分だけだった。やさしいのは言葉だけで気持ちはなかった。して欲しいことをさりげなく言うとKitは何でもした。送り迎えから荷物持ち・・・Aorにプレゼントするためバイトに精を出した。まるで奴隷のように・・・でもそれがKitの喜びだった。そして結婚を夢見た。

★Back Number
疑わしきは罰せず - Thailand Fiction 13

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by Sukhumvit_Walker | 2008-10-29 15:12 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

疑わしきは罰せず - Thailand Fiction 13

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  「信じてって言っても説明してくれないとわかんないよ・・・」
「セツメイ・・イミ何?日本語難しい。わかんないよ・・・愛してるジュンイチ」
  「説明・・・こっちはタイ語がわからないよ。とにかくどうして電話がクローズドだったの」
「バッテリーがなくなったの・・・ごめんなさい」 
Farはジュンイチの声のトーンが変わったのを見逃さなかった。返事を最小限に留め様子を伺う。後はジュンイチの話にうなづけばうまく行くはずだわ・・・そう思い返事を待った。
  「バッテリーがなくなった?最初はBodyslamが流れたぜ。その後から留守電だよ。どうして出れなかったの?」
電源を切ったのはKit。でも彼は電話には出てない・・・たぶんそんな感じね。Farは状況を把握し最も無難な言い訳をした。
「ごめんなさい。疲れて電話バックに入れたまま寝ちゃったの」
  「本当?信じていいの?」 ジュンイチが少し安堵して答えた。
「本当って・・・寝てただけなのよ」
  「いや、いつもみたいにすぐ出ないから心配して・・・Farのこと愛しているから心配するんだよ。怒ってごめんね」
疑惑はあるが証拠はない。疑わしきは罰せずかぁ・・・彼女は本当に寝てただけかもしれない。この女を信じよう。ジュンイチはごめんねと言った後に自分にそう言い聞かせた。心が決まると気分も晴れ声も明るくなっていった。もうすっかりFarに甘いジュンイチに戻っていた。
  「仕事が終わったら電話するね。愛しているよFar」 
ジュンイチはやさしい声でそう言いミーティングに戻った。

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涙の名演 - Thailand Fiction 12

ファースト・インプレッション - Thailand Fiction 11

暗黒への旅路 - Thailand Fiction 10

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by Sukhumvit_Walker | 2008-10-19 16:54 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

涙の名演 - Thailand Fiction 12

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いつもと同じ様にしなければ・・・Farは呼び出し音が5回鳴ったところで電話を切った。10分程でコールバックがあるはずだ。ジュンイチとの電話はいつもそうだった。3分経っても電話は鳴らない・・・いつもは気にしない時間が長く感じた。ほどなくタクシーはアパートに着き、Farは携帯を握り締めたまま部屋のベットに腰掛け待った。

午後のミーティングが始まった。昼休み電話をしたが留守電のままだった。もういいやと思っても携帯に目が行く。仕事に集中して忘れよう。そう思い携帯をポケットに入れようとした時、突然携帯が震えた。Far?・・・ジュンイチは期待してディスプレイを覗いた。Farだ!それまでの苛立ちがうそのように消え安堵すると同時に、今度は強烈に電話をしたい衝動に駆られた。ミーティングは始まったばかりだ。しばらく我慢していたが居ても立ってもいられなくなり、30分後にトイレと言って中座した。急ぎ外に出て電話をする。Bodyslamのメロディがまどろっこしい・・・

もうかかってこない?そう不安を覚えた時、着信を知らせるBodyslamの曲が部屋に響いた。落ち着かなきゃ・・・そう自分に言い聞かせ10秒程待ち電話をとった。
「ハロー」Farがそう言うなり、ジュンイチは一気に思いのたけをまくし立てた。
 「一体どこに行ってたんだ!電話をクローズドにしてるし!誰と一緒だったんだ!」
 「昔みたいに男と一緒なのか?今度はタイ人か?日本人か?おい!聞いてるのか?」
ジュンイチの罵声を聞きながらFarは勝ったと思った。悲しいことを思い浮かべ、ただ電話ですすり泣いた。しばらくすると案の定ジュンイチの声のトーンが変わった。
 「おい!Far泣いてるのか?どうしたんだ?Far・・・泣くなよ」
「ごめんなさい・・・」それだけ言いまたすすり泣く。
 「ごめんなさいって・・・男と一緒だったのか・・・」ジュンイチの声は明らかに狼狽していた。
「うぅん、ただ悲しい。ごめんなさい・・・あなただけなのに・・・夜の女だったからやっぱり信じないのね・・・悪いことしてなくても信じてもらえないのね。愛しているのに・・・」
少し間を置きか細い声でFarはそう言った。

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ファースト・インプレッション - Thailand Fiction 11

暗黒への旅路 - Thailand Fiction 10

イージー・マネー - Thailand Fiction 9

孤独の旅路 - Thailand Fiction 8

嘘のつき方 - Thailand Fiction 7

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スワンナプームの光景 - Thailand Fiction 1


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by Sukhumvit_Walker | 2008-10-09 11:03 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

ファースト・インプレッション - Thailand Fiction 11

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お店に出て2日目、訳も判らず客とアフターしてホテルに行った。お金を貰おうとしたら客は怒り出した。翌日ママからものすごく怒られた。「ママとは付き合い長いから正直に言うけど、昨晩あの新しい女とホテルに行ったんだ。俺が誘ったんじゃないぜ。あの女から誘ってきたんだよ。お金を払うなら行かないって言ったら、あなたが好きだとしつこく言うんだよ。いい女だしかなり酔っ払ってたしな。成り行きで行ったんだよ。そしたら事が終わってから金をくれだって・・・よく日本語分かってない感じだったし3万小遣い渡したけどね。でもやめさせた方がいいよ。売春宿と間違われちゃうよ」客からこんな電話があったという。

ペナルティーとして新たに10万の借金ができた。今度やったらクビだという。愕然としているとPloyが出勤してきて罵声を浴びせた。「あなた私の客と寝たでしょ!この泥棒猫!」ここがタニヤとは別世界なのを初めて実感した。落ち込んでしょげているとPingがやって小声で囁いた。「あなた馬鹿ねぇ。もっと上手にやりなさい・・・Ployだってママにばれないように同じようなことやってるんだから。でも他人の客は絶対取ったら駄目よ・・・」
お店の女の子はみんなライバルだった。可愛い顔をして優しそうに見えても、裏ではあらゆる手を使い利権である客の奪い合いをしていた。ただ笑ってホテルに行くタニヤとは違い、自分のすべてを武器にしないとお金は稼げなかった。

この事件以来Farは店でもアパートでも女の子からよそよそしくされた。陰口を言われるだけでなく、数人の客が店で露骨に身体を触りホテルに誘ってきた。じっと耐えるしかなかった。クビになったらお金ばかりか住むところさえない。がんばろうと努力したが、なかなか接客のコツはつかめなかった。指名がない日々が続いた。焦り、苛立った・・・経済的にも行き詰まりタイへの送金どころじゃなかった。ふとCatに会いたいと思った・・・日本のどこかに彼女はいる。少しでも心を許せる誰かが傍に居てほしかった。何もかもがいやになり逃げ出したい気持ちだった。そんな時ジュンイチと出合った。

日本語しか話さない他の客と違いジュンイチは少しタイ語を話した。ジュンイチは他の子のうまい日本語より、Farの片言の日本語とタイ語が混ざった会話がバンコクみたいでいいと喜んだ。Farの心は久しぶりに晴れた。小太りな体形に高そうなスーツ、腕にはローレックス・・・お金持ちとFarは思った。ヨレヨレの服を着てカラオケを歌い飲んだくれてる他の客とは明らかに違った。ハンサムじゃないが、良く見ると眼鏡の奥から愛嬌のあるやさしそうな小さな瞳が微笑んでいた。このお金持ちを放しちゃいけない・・・これがジュンイチへの第一印象だった。

そこまで回想した時、我に返った。決心し携帯の電源を入れジュンイチの番号を押した。何か言われたらとにかく謝るしかない。あのやさしい小さな瞳はきっと許してくれる・・・今までもそうだったように。

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暗黒への旅路 - Thailand Fiction 10

イージー・マネー - Thailand Fiction 9

孤独の旅路 - Thailand Fiction 8

嘘のつき方 - Thailand Fiction 7

モーチットの再会 - Thailand Fiction 6

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by Sukhumvit_Walker | 2008-10-03 13:17 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

暗黒への旅路 - Thailand Fiction 10

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ややこしい書類をいっぱい書いて数ヶ月後、予想に反して日本行きのVISAがおりた。オカマのSomchaiは自分のことのようにはしゃぎ朝までお祝いをしてくれた。佐々木プラパワデそれが新しい名前だった。
5月の日本の朝はFarには寒かった。成田からワゴン車に乗せられアパートへ連れて行かれた。アパートは同じ店のPloyとPing、そしてママの従姉妹の Nuiと一緒だった。Nuiはチーママでお店のシステム、日本での生活など一通り教えてくれた。だた飲むだけで、お金もいっぱい貰える。しかもみんなやさしそう・・・この時はまだそう思っていた。

お店にはその夜から出た。日本語は少し話せるつもりだったが、ほとんどわからなかった。日本のカラオケを歌う客からは敬遠され、身体を触るだけの客の相手をするしかなかった。予想以上に言葉の障害は大きくFarは焦った。タニヤとは勝手があまりにも違った。
「客をハッピーにしなきゃ指名されないわよ。可愛いだけじゃ飽きられるから・・・」ってNuiが言っていたけど・・・客と何を話していいのかが判らなかった。稼ぎたいという気持ちが益々焦りを生み、何も聞き取れなくなった。PloyもPingもNuiも助けてくれない・・・初めて孤独を感じた。
まるで今から暗黒への旅路が始まるかのように、Farに暗闇が訪れ不安が心を支配した。

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イージー・マネー - Thailand Fiction 9

孤独の旅路 - Thailand Fiction 8

嘘のつき方 - Thailand Fiction 7

モーチットの再会 - Thailand Fiction 6

チェンマイの宝物 - Thailand Fiction 5

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by Sukhumvit_Walker | 2008-09-29 23:16 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

イージー・マネー - Thailand Fiction 9

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アパートに向うタクシーの中では、悲しみより怒りがFarを支配していた。もうあんなやつと別れようと思い始めた時、ふとジュンイチの顔が浮かんだ。電話があったかどうか酔って覚えてない。携帯を取り出すと電源がOFFになっていた。電源を入れるとSMSが来た。おびただしい数の着信・・・やばい!本能的に電源をOFFにし、ジュンイチへの言い訳のため頭を整理し始めた。ジュンイチを失うわけにはいかなかった。まだまだ田舎の家族のためにお金が必要だったし、やさしい彼が嫌いではなかった。言い訳を考えてた思考がいつしかジュンイチとの出会いをトレースしていた。

Farは神様が唯一与えてくれた美貌という才能を最大限活用しお金を稼ぐために、21歳でウドンタニからバンコクに出てきた。タニヤでは日本人相手に少しの我慢でイージーにお金が稼げた。虫唾が走りそうな男でもお金を思い浮かべながら我慢した。
ウドンタニでの1ヶ月の稼ぎが1晩で稼げた。お金と引き換えに心はどんどん寂しくなっていく。でも一旦味をしめた生活は変えられない・・・最初は弟妹の学費稼ぎにやった仕事が家や車のためになっていた。寂しい心を紛らわすように客をとった。

やがて寂しい心の隙間に、少しやさしい常連客が入り込んできた。スクンビットのアパートで半同棲が始まり結婚を夢見た。でもそれは夢だった。甘く愛を語った男も日本への帰国が決まると途端によそよそしくなった。「お前もビジネスだっただろ・・・他の男と寝る女とどうして結婚できるんだ。お前は飲むだけの仕事にチェンジしたと言ってたけど、俺が何も知らないと思っているのか?」最後にそう言われ泣きながらアパートを後にした。

そんな時タニヤで働くオカマのSomchaiから日本行きの話をもらった。以前お店の先輩のCatから日本に行くことを誘われたが、150万バーツ借金しての不法入国に躊躇しているうちにCatはさっさと行ってしまった。Somchaiの話は基本飲むだけの仕事、偽装結婚して観光VISAで入国するものだった。行けるかどうかは運次第、でも不法入国より借金のリスクは少ない・・・取りあえずあてにせず話に乗った。捨てた男を忘れるためにもお金を稼ぎたかった。

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孤独の旅路 - Thailand Fiction 8

嘘のつき方 - Thailand Fiction 7

モーチットの再会 - Thailand Fiction 6

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by Sukhumvit_Walker | 2008-09-17 23:13 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

孤独の旅路 - Thailand Fiction 8

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出社したが悶々として仕事が手につかない。10分毎に電話するが留守電メッセージがむなしく流れるだけだ。アシスタントの子もいらいらに気づいたようでよそよそしい。触らぬ神に祟りなしってところか。

ジュンイチとFarが出合ったのは3年前だった。その頃ジュンイチの生活は荒れていた。名古屋からの単身赴任は2年目に入り、妻との間に溝ができ、単身というより別居生活になっていた。東京本社に転勤が決まった時、子供はまだ小6だし家族で引越すもの思い込んでいた。しかし子供の転校の影響と足が悪い実家のお母さんのリハビリを手伝うことを理由にやんわり断られた。妻とは名古屋支社での職場結婚であり最初は人が羨むようなカップルだった。だが子ができ、妻が実家に入り浸るようになってから少しずつ歯車が狂い始めた。

東京で生活を始めて見ると意外にも妻の呪縛がとれ単身を楽しんだ。本社での仕事は新しいタイでのプロジェクトが主で、バンコクは2ヵ月に1度程度行った。タニヤやMP遊びもその時覚えた。オキニも出来、擬似恋愛とわかっていてものめり込んでいった。でも楽しみは長く続かなかった。1年半経つとプロジェクトの仕事は現地法人に移行され終了し出張も無くなった。オキニに会いたくて半年後プライベートで会いに行ったが、次いつ来るの?って聞かれた時、年に何度も来れない現実を認識した。

妻から突然離婚を迫られたのはそんな時だった。改めて考えたら、多忙とバンコク出張を理由に、ここ2年で4回しか名古屋に帰っていなかった。たまに帰る名古屋には自分の居場所はもう無くなっていた。妻にはリハビリ施設で知り合った男がいる様な気がしたが、もうどうでもよかった。生活から妻子の存在が消えていた・・・離婚にはすぐ応じなかったが、もう心は名古屋には無かった。

ふと孤独を感じた・・・家族も女もいなくなった。寂しさを紛らわすため毎日飲んだ。銀座や新宿の女に癒しを求めた。でも何かが違った・・・バンコクが懐かしかった。
気がつくと上野のタイスナに毎晩通うようになっていた。タイ語の響きが心を癒してくれた。ある日夜遅く寄ると新しい女がいた。小顔で目が大きく色っぽい唇をしていた。それがFarだった。

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嘘のつき方 - Thailand Fiction 7

モーチットの再会 - Thailand Fiction 6

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by Sukhumvit_Walker | 2008-09-11 19:00 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

嘘のつき方 - Thailand Fiction 7

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「Kit!どこに行ってたの?!!!」 Farはいきなり入ってきたKitにそう叫んだ。
  「まだ寝てると思ったよ。携帯なくして探しに行ってたんだ。Spoonにあったよ」 
帰るタクシーの中で考えた言い訳をさらりと言った。
こういう時はあまり多くを語ってはいけない。詳しく話すとボロが出る。そう自分に言い聞かせ、言い訳の補足をしたい衝動をぐっと我慢した。数秒の沈黙がやたら長く感じる。何か話さなきゃと思った瞬間・・・「心配したじゃない。起きたらいないんだもん・・・」 Farが細い声でポツリと言った。

心がKitに抱きつきたいと欲するが、目の前には昨日と別Kitがいた。目から微笑みが消え、言葉には甘い響きがない。そんなKitを見ていると少しづつ冷静さが戻ってきた。気弱なハートが消えいつものFarが蘇る。ふと昨夜のKit身勝手さを思い出す。
「出かけるくらい言ってもいいじゃない!」
  「言ったさ!でも泥酔してただろ!」 
思いがけない強い調子のFarの言葉に、少し感情的にKitは応えた。
「そんなの聞こえなかった。酔ってるのわかってるんだからちゃんと起こしてよ!やるだけやって出かけるなんで勝手過ぎるんじゃない!しかもここどこよ!私のアパートに送ってくれんじゃなかったの!エアコンないしマイサバーイ!!」 Farは感情を一気にぶちまけた。
  「エアコンなしで悪かったな!俺には日本人のスポンサーなんかいないしな!」 
「なによそれ!」 Farの怒った目から涙が溢れ出す。
「帰る!」 Farは急いで服を着、取るものをとって飛び出して行った。

言い過ぎたと思いFarを追おうと思ったがKitは思い止まった。Farを失うかもしれないと思ったがAorを失うのは絶対いやだった。冷静に嘘をついたのが良かったと思った。可哀想だったが、Farが勝手に出て行ってくれたのだ。結果論だが思いがけない展開に安堵した。あまり時間がない早く女の痕跡を消そう・・・Kitは気持ちを切替え部屋を掃除し始めた。

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by Sukhumvit_Walker | 2008-09-05 22:00 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)