<   2008年 08月 ( 6 )   > この月の画像一覧

 

モーチットの再会 - Thailand Fiction 6

c0165405_22125976.jpg

人込みの向こうにAorを見つけた。目が合うとAorの疲れた顔が笑顔に変わり手を振った。人目もはばからずAorと名前を呼ぶKit・・・10ヶ月ぶりの再会だ。

「ごめんね。朝早くから・・・眠いでしょ、大丈夫なの?・・・シーロムには10時でいいの」

  「大丈夫、Aorこそ眠れた?・・・」 時間が有り過ぎる。アパートはマズイ!なんとかしなきゃ。
  「早いけど渋滞も心配だし面接に遅れたらいけないから、このままシーロム行こう・・・」 

タクシーでシーロムに入るとラッキーにも24時間オープンのMacを見つけた。面接する会社は目と鼻の先だ。座って話をするAorを見つめる。相変わらず素敵な笑顔だ・・・幸せな時はあっという間に過ぎ時間になる。Aorは面接後、午後から2~3の会社を回ると言う。終わったら電話をもらうことにし、ボストンバックを預かりAorを送り出した。疲れたのか安心したのか不意に睡魔が襲う。落睡・・・首の痛さで目が覚めた時はすでに13時を回っていた。

「やばい!帰ってFarを追い出さなきゃ・・・」ボストンバックを抱え急ぎラチャダーに向う。アパートのドアを開けるとバスタオル姿のFarが振り向いた。

★Back Number
チェンマイの宝物 - Thailand Fiction 5

ラチャダーピセークのシャワー - Thailand Fiction 4

留守電の疑惑 - Thailand Fiction 3

ハリウッド・アワードの酔っ払い - Thailand Fiction 2

スワンナプームの光景 - Thailand Fiction 1


[PR]

by Sukhumvit_Walker | 2008-08-30 12:17 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

チェンマイの宝物 - Thailand Fiction 5

c0165405_1843763.jpg

「このバスだろうか・・・それとも着いてるのか?」そう思いながらKitはモーチットのバスターミナルでAorを探していた。AorはチェンマイにいるKitの恋人だ。彼女が大学を卒業したら結婚したいが、稼ぎが少ない彼をAorの父親が嫌っていた。Kitは稼くためにクルンテープに来た・・・Bangkok Dreamを夢見て・・・学歴もない彼に昼間の高収入の職があるはずもなく、友達に夜の仕事を紹介され見様見真似で始めた。

Aorとはハイスクールからの付き合いだ。頭が良くて美人・・・最初は遠くから眺めているだけだった。淡い初恋だった・・・あのロイカトーンの夜までは。
メナーム川の岸辺で花火が打上げられ・・・ステーションから着飾った女達のパレードが来る。プラテイープのろうそくがロマンティックに揺れる。チェンマイのロイカトーンはシャイな少年だったKitに魔法をかけ勇気を与えた。
今でもその夜のことは幻想のようだ。ナイトバザールのフードコートに呼び出したまでは覚えているが、何を話したのか?何をしたのか?・・・すべて幻のようだ。夢の世界で結ばれた・・・気がついたら手をつなぎピン川の河原を歩いていた。

それ以来Aorは特別な存在・・・神様から授かった宝物だ。その彼女から電話があったのは朝6時前だった。寝入りばな夢うつつで電話に出たがAorの声を聞き飛び起きた。

「急に就職の面接が今日になったから最終のバスに乗ったの。仕事が終わったころ電話をしたんだけど・・・仕事遅かったの?・・・」
確かに電話を受けるときディスプレイを見たら着信有りだ。Farと一緒で全く気付かなかった。
  「ごめん酔ってて・・・バスターミナルまで迎えに行くから・・・」 
そう言って電話を切ると、寝ているFarに構わずアパートを飛び出した。

★Back Number
ラチャダーピセークのシャワー - Thailand Fiction 4

留守電の疑惑 - Thailand Fiction 3

ハリウッド・アワードの酔っ払い - Thailand Fiction 2

スワンナプームの光景 - Thailand Fiction 1


[PR]

by Sukhumvit_Walker | 2008-08-28 19:42 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

ラチャダーピセークのシャワー - Thailand Fiction 4

c0165405_14304986.jpg

暑い・・・あまりの暑苦しさでFarは覚醒し始めた。エアコンもなく締め切った部屋の空気は、午後の照りつける太陽で熱せられ、澱み息苦しい。扇風機が熱い空気をかき回し、身体中に汗がまとわり付く・・・頭痛がし吐き気がする。完全に二日酔いだ。停止していた思考が、ラチャダーのKitの部屋に居ることに気付くとともに、少しづつ働き始め目を明けた。

いきなり自分の剥き出しの下半身が目に飛び込む・・・股間は汚れ左足首にパンティが絡まっていた。Kitはいない・・・記憶はSpoonに入ったまではあるが、あとは洗面所とKitの身体の重さがとぎれとぎれに甦るだけだ。身勝手に欲望を吐き出したKitに腹を立てたが、彼がいないことがFarの不安を掻き立てた。「キィ ツゥン・・・Kitどこなの?」起き上がりシャワールームに向う。

Kitとは3ヶ月前、Hollywood Awardsで出合った。長身でやさしそうなフェイスがFarのタイプだった。若い頃何回も騙された経験から、もうタイ人は懲り懲りと思っていたにも関わらず、Kitとはその夜関係を持った。日本人に囲われて生計を立てるようになってからは、極力リスキーなことは避けてきたし、今度も夜の男との1回限りのアバンチュールのつもりだった。でも年下のいい男から「そんな年には見えない、きれいだ・・・Hollywoodの客だから言っているんじゃない。愛してる」と言われると嘘だとわかっていても浮かれていった。そして何より久しぶりにタイ語で愛を語り合えることがうれしかった。気が付いた時には、身も心も、そしてお金もKitに捧げていた。

シャワーはFarの覚醒を早めた。頭痛はするが思考ははっきりしてきた。「とりあえずKitに電話ね」そう思いバスタオルに身を包んだ。

★Back Number
留守電の疑惑 - Thailand Fiction 3

ハリウッド・アワードの酔っ払い - Thailand Fiction 2

スワンナプームの光景 - Thailand Fiction 1


[PR]

by Sukhumvit_Walker | 2008-08-25 21:26 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

留守電の疑惑 - Thailand Fiction 3

c0165405_1683065.jpg

アナウンスが後15分で成田に着陸することを告げる。定刻どおりの6:20だ。ブラインドを上げると眠い眼に眩い光が飛び込んで来た。朝日とともに頭が回り始め現実に引き戻される。「あぁ・・・また今日から味気ない生活が始まるのか」 ジュンイチはそう思うとため息をついた。
 
入国審査、税関をパスし京成電車に乗る前にFarに電話をした。いつものBodyslamのメロディが流れる。10秒、15秒・・・曲が進むにつれFarが恋しくなる。7時間前に別れたばかりなのに・・・曲がフェードアウトされやむなく電話を切る。「たぶん寝てるのだろう・・・・」もう一度電話をかけるが空しくBodyslamが流れるだけだ。

ジュンイチは電話を諦め電車に乗った。7時前だというのにいつも結構混んでいる。何気なく電話の事を考えていたら、客と一緒の時は電話に出れない昔のFarが脳裏をよぎった。ふと不信感が芽生える。「いつも寝ぼけていても電話に出るのにおかしい?アパートに帰ってないんじゃないか?・・・」一旦そう思うと不信が益々募り不安になる。「もしやあの後スワンナプームで客を出迎えたのでは?関空からは確か23時過ぎだったか?・・・いやそんな事はない!タニヤからは足を洗ったはずだ・・・いや昔の客とたまに会ってるのかも・・・いや信じよう俺の女になったんだから・・・」頭の中は堂々巡りだ。

上野に着き急ぎ電話をするとタイ語の留守電メッセージが流れた。「どうして・・・留守電!ってことは寝てない!起きてる・・・」疑惑は一気に膨らんだ。

★Back Number
ハリウッド・アワードの酔っ払い - Thailand Fiction 2

スワンナプームの光景 - Thailand Fiction 1



にほんプログ村タイ情報
[PR]

by Sukhumvit_Walker | 2008-08-21 00:14 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

ハリウッド・アワードの酔っ払い - Thailand Fiction 2

c0165405_1153766.jpg

Hollywood Awardsのエントランスではタイ人にしては背が高い長髪の赤服の男が待っていた。女が着くとジョニーウオーカーのブラックラベルを持ちステージ前の席にエスコートした。ステージはブレイクに入ったばかりでスクリーンにはBodyslamのショーの予告が流れている。

「Kit!来月Bodyslamハリウッドに来るんだ!絶対行く~ぅ。いい席取っといてよ」
  『今日もセクシーショーあるから楽しんでよ。』 そう言いながらFarに水割りをサーブした。
「なるべく席に来てよね。でないと浮気しちゃうから・・・」

今夜の彼女は年甲斐もなくはしゃいでいた。4杯目のブラックラベルを飲み干すとボトルを取り、さっきから始まったダンスショーのコヨーテに勧める。コヨーテは顔をしかめながらもラッパ飲みし、会釈しながらボトルを返した。

「彼女あとで呼んで。パーッと騒ぎたいの・・・」 寂しさを紛らわすためかFarはそう言った。
  『わかったよ。2~3人呼んでくるよ・・・』
  
オカマのシンガーでハリウッドが盛り上る頃、コヨーテはテーブルにやって来た。Farを囲んで3人のコヨーテがキャッキャ騒ぎながら20分で6杯のカクテルを飲んでショーに戻った。馬鹿騒ぎが終わると急につまらなくなったのか、Farは唇を突き出し不機嫌顔になった。

「帰るわよ。チェックビンして・・・」 Farはそう言いKitに3000バーツ渡して千鳥足でエントランスに向った。Kitは後を追いかけ足元がおぼつかないFarを支えハリウッドを出た。「酔ってなんかないわよ!Spoonで待ってるから早く仕事終わらせて来て・・・」 FarはKitの振り払い歩いて隣のダイニングバーへ向かった。

仕事を終えSpoonに入ったKitは奥の席にポツンと座るFarを見つけた。
『飲みすぎだよ。かなり酔ってるよ。もう帰ろうよ』 Kitにそう言われるとFarは意地になりグラスの空ける・・・次第にマオの心地良さが気持ち悪さに変わっていく。突然汚物がこみ上げ洗面所に走った。

空が白みかける少し前、男は女を連れてアパートに戻った。女は携帯が鳴ってもわからないほど酔っていた。男はうるさく鳴る女の携帯の電源を落とし、10畳ほどのワンルームの真ん中にある大きめのベッドに女を横たえる。そしてシャワーも浴びず、意識が朦朧とする女の中に欲望を放ち眠りに落ちた。

★Back Number
スワンナプームの光景 - Thailand Fiction 1



にほんプログ村タイ情報
[PR]

by Sukhumvit_Walker | 2008-08-20 00:20 | Thailand Fiction | Trackback(1) | Comments(0)  

スワンナプームの光景 - Thailand Fiction 1

c0165405_9452983.jpg

スワンナプームには色々な人がいる。にたにた笑いながらゴルフバックをカートで運ぶ日本人、ディバックを背負い大きい布製バックを押す日焼けしたファランの老夫婦、スーツにネクタイで携帯しっぱなしのビジネスマン、本当に金がなさそうな汚いバックパッカー、平気で列に割り込むダサいコリアン、土産をいっぱい抱え大声で話すウザい中国人団体客、布で顔を隠したクサいアラブ人・・・多種多様な人種で24時間ごった返す国際空港だ。

今夜日本に帰るジュンイチはタイ航空のカウンターでチェックインを終え、Immigrationに向いながら、さっき近くにいた日本人の中年男性とタニヤ嬢っぽいタイ人女性の会話を思い出していた。

「アイシテル アナタ クルトキ デンワ スルネ・・・ワタシ マッテルネ ウワキダメヨ」
  『うんまた直ぐ来るよ。大丈夫浮気なんかしないから・・・』

ジュンイチは擬似恋愛にはまったビギナーっぽいタイフリークの中年男性に少し優越感を感じながら、隣りを歩くタイ人の恋人に言った。

『さっきのおじさん愛されてないのに馬鹿だね。すっかり女の子のペースだよ』
  「いいんじゃん。お金で恋人みたいになれるし・・・男だってたまに女チェンジしてるよきっと」
『僕はいやだな。僕ひとりじゃなきゃ。あの子他の男にもああ言ってるんだぜ。僕も最初は彼と同じだったよ。でも君と会ってから君だけだよ。君が本当に僕を愛してくれるまで随分時間かかったけどね』
  「そうね。もう長いからね。トーキョー着いたら直ぐ電話してね。心配だから」
  「あと今月お金少し多くお願いね。ファミリー大変だから。いつもごめんね」
『はいはいタイの奥さん。電話するよ。とりあえず30000バーツ渡しとくね。足らなくなったら直ぐ言うんだよ送るから。じゃあもう行くね』 ジュンイチはそう言うと女を抱きしめキスをした。

女は目を少し潤ませ手を振ってジュンイチがImmigrationに消えるまで見送った後、携帯で話しながらタクシー乗り場に向った。

「今お店?今仕事終わったの・・・今タクシー乗った。急いで行くから待ってて・・・」
  『マイペンライ。近くに来たら電話して店の前に出て待ってるよ・・・今夜はお前んち泊まっていいんだろ・・・』

女はタクシーに乗り込むと男が待つラチャダーのハリウッドと行き先を告げ、最近気になり始めた目じりのしわを丹念にメイキャップし始めた。
[PR]

by Sukhumvit_Walker | 2008-08-19 00:20 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)