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暗黒への旅路 - Thailand Fiction 10

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ややこしい書類をいっぱい書いて数ヶ月後、予想に反して日本行きのVISAがおりた。オカマのSomchaiは自分のことのようにはしゃぎ朝までお祝いをしてくれた。佐々木プラパワデそれが新しい名前だった。
5月の日本の朝はFarには寒かった。成田からワゴン車に乗せられアパートへ連れて行かれた。アパートは同じ店のPloyとPing、そしてママの従姉妹の Nuiと一緒だった。Nuiはチーママでお店のシステム、日本での生活など一通り教えてくれた。だた飲むだけで、お金もいっぱい貰える。しかもみんなやさしそう・・・この時はまだそう思っていた。

お店にはその夜から出た。日本語は少し話せるつもりだったが、ほとんどわからなかった。日本のカラオケを歌う客からは敬遠され、身体を触るだけの客の相手をするしかなかった。予想以上に言葉の障害は大きくFarは焦った。タニヤとは勝手があまりにも違った。
「客をハッピーにしなきゃ指名されないわよ。可愛いだけじゃ飽きられるから・・・」ってNuiが言っていたけど・・・客と何を話していいのかが判らなかった。稼ぎたいという気持ちが益々焦りを生み、何も聞き取れなくなった。PloyもPingもNuiも助けてくれない・・・初めて孤独を感じた。
まるで今から暗黒への旅路が始まるかのように、Farに暗闇が訪れ不安が心を支配した。

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by Sukhumvit_Walker | 2008-09-29 23:16 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

イージー・マネー - Thailand Fiction 9

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アパートに向うタクシーの中では、悲しみより怒りがFarを支配していた。もうあんなやつと別れようと思い始めた時、ふとジュンイチの顔が浮かんだ。電話があったかどうか酔って覚えてない。携帯を取り出すと電源がOFFになっていた。電源を入れるとSMSが来た。おびただしい数の着信・・・やばい!本能的に電源をOFFにし、ジュンイチへの言い訳のため頭を整理し始めた。ジュンイチを失うわけにはいかなかった。まだまだ田舎の家族のためにお金が必要だったし、やさしい彼が嫌いではなかった。言い訳を考えてた思考がいつしかジュンイチとの出会いをトレースしていた。

Farは神様が唯一与えてくれた美貌という才能を最大限活用しお金を稼ぐために、21歳でウドンタニからバンコクに出てきた。タニヤでは日本人相手に少しの我慢でイージーにお金が稼げた。虫唾が走りそうな男でもお金を思い浮かべながら我慢した。
ウドンタニでの1ヶ月の稼ぎが1晩で稼げた。お金と引き換えに心はどんどん寂しくなっていく。でも一旦味をしめた生活は変えられない・・・最初は弟妹の学費稼ぎにやった仕事が家や車のためになっていた。寂しい心を紛らわすように客をとった。

やがて寂しい心の隙間に、少しやさしい常連客が入り込んできた。スクンビットのアパートで半同棲が始まり結婚を夢見た。でもそれは夢だった。甘く愛を語った男も日本への帰国が決まると途端によそよそしくなった。「お前もビジネスだっただろ・・・他の男と寝る女とどうして結婚できるんだ。お前は飲むだけの仕事にチェンジしたと言ってたけど、俺が何も知らないと思っているのか?」最後にそう言われ泣きながらアパートを後にした。

そんな時タニヤで働くオカマのSomchaiから日本行きの話をもらった。以前お店の先輩のCatから日本に行くことを誘われたが、150万バーツ借金しての不法入国に躊躇しているうちにCatはさっさと行ってしまった。Somchaiの話は基本飲むだけの仕事、偽装結婚して観光VISAで入国するものだった。行けるかどうかは運次第、でも不法入国より借金のリスクは少ない・・・取りあえずあてにせず話に乗った。捨てた男を忘れるためにもお金を稼ぎたかった。

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by Sukhumvit_Walker | 2008-09-17 23:13 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

孤独の旅路 - Thailand Fiction 8

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出社したが悶々として仕事が手につかない。10分毎に電話するが留守電メッセージがむなしく流れるだけだ。アシスタントの子もいらいらに気づいたようでよそよそしい。触らぬ神に祟りなしってところか。

ジュンイチとFarが出合ったのは3年前だった。その頃ジュンイチの生活は荒れていた。名古屋からの単身赴任は2年目に入り、妻との間に溝ができ、単身というより別居生活になっていた。東京本社に転勤が決まった時、子供はまだ小6だし家族で引越すもの思い込んでいた。しかし子供の転校の影響と足が悪い実家のお母さんのリハビリを手伝うことを理由にやんわり断られた。妻とは名古屋支社での職場結婚であり最初は人が羨むようなカップルだった。だが子ができ、妻が実家に入り浸るようになってから少しずつ歯車が狂い始めた。

東京で生活を始めて見ると意外にも妻の呪縛がとれ単身を楽しんだ。本社での仕事は新しいタイでのプロジェクトが主で、バンコクは2ヵ月に1度程度行った。タニヤやMP遊びもその時覚えた。オキニも出来、擬似恋愛とわかっていてものめり込んでいった。でも楽しみは長く続かなかった。1年半経つとプロジェクトの仕事は現地法人に移行され終了し出張も無くなった。オキニに会いたくて半年後プライベートで会いに行ったが、次いつ来るの?って聞かれた時、年に何度も来れない現実を認識した。

妻から突然離婚を迫られたのはそんな時だった。改めて考えたら、多忙とバンコク出張を理由に、ここ2年で4回しか名古屋に帰っていなかった。たまに帰る名古屋には自分の居場所はもう無くなっていた。妻にはリハビリ施設で知り合った男がいる様な気がしたが、もうどうでもよかった。生活から妻子の存在が消えていた・・・離婚にはすぐ応じなかったが、もう心は名古屋には無かった。

ふと孤独を感じた・・・家族も女もいなくなった。寂しさを紛らわすため毎日飲んだ。銀座や新宿の女に癒しを求めた。でも何かが違った・・・バンコクが懐かしかった。
気がつくと上野のタイスナに毎晩通うようになっていた。タイ語の響きが心を癒してくれた。ある日夜遅く寄ると新しい女がいた。小顔で目が大きく色っぽい唇をしていた。それがFarだった。

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by Sukhumvit_Walker | 2008-09-11 19:00 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)  

嘘のつき方 - Thailand Fiction 7

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「Kit!どこに行ってたの?!!!」 Farはいきなり入ってきたKitにそう叫んだ。
  「まだ寝てると思ったよ。携帯なくして探しに行ってたんだ。Spoonにあったよ」 
帰るタクシーの中で考えた言い訳をさらりと言った。
こういう時はあまり多くを語ってはいけない。詳しく話すとボロが出る。そう自分に言い聞かせ、言い訳の補足をしたい衝動をぐっと我慢した。数秒の沈黙がやたら長く感じる。何か話さなきゃと思った瞬間・・・「心配したじゃない。起きたらいないんだもん・・・」 Farが細い声でポツリと言った。

心がKitに抱きつきたいと欲するが、目の前には昨日と別Kitがいた。目から微笑みが消え、言葉には甘い響きがない。そんなKitを見ていると少しづつ冷静さが戻ってきた。気弱なハートが消えいつものFarが蘇る。ふと昨夜のKit身勝手さを思い出す。
「出かけるくらい言ってもいいじゃない!」
  「言ったさ!でも泥酔してただろ!」 
思いがけない強い調子のFarの言葉に、少し感情的にKitは応えた。
「そんなの聞こえなかった。酔ってるのわかってるんだからちゃんと起こしてよ!やるだけやって出かけるなんで勝手過ぎるんじゃない!しかもここどこよ!私のアパートに送ってくれんじゃなかったの!エアコンないしマイサバーイ!!」 Farは感情を一気にぶちまけた。
  「エアコンなしで悪かったな!俺には日本人のスポンサーなんかいないしな!」 
「なによそれ!」 Farの怒った目から涙が溢れ出す。
「帰る!」 Farは急いで服を着、取るものをとって飛び出して行った。

言い過ぎたと思いFarを追おうと思ったがKitは思い止まった。Farを失うかもしれないと思ったがAorを失うのは絶対いやだった。冷静に嘘をついたのが良かったと思った。可哀想だったが、Farが勝手に出て行ってくれたのだ。結果論だが思いがけない展開に安堵した。あまり時間がない早く女の痕跡を消そう・・・Kitは気持ちを切替え部屋を掃除し始めた。

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by Sukhumvit_Walker | 2008-09-05 22:00 | Thailand Fiction | Trackback | Comments(0)