昔馴染み - Thailand Fiction 16
2008年 11月 24日

ジュンイチの疑いが晴れFarは安堵したのか空腹を覚えた。外へ出ていつもの屋台でセンレックを食べ腹を満たすと、ビューティーサロンに入りシャンプーをしてとマニキュアを塗ってもらった。
さっきまでの喧嘩していたことなどすっかり忘れおしゃれに没頭した。
サバーイ、サヌック、マイペンライが彼女の価値基準であり、いやなことはさっさと忘れ、楽しいことだけ考える楽天的タイ人の典型だった。
身ぎれいになると気分は晴れ、オカマのSomchaiに電話した。
「ねぇ起きてる?今日仕事終わったら遊び行こうよ・・・」「OK!いつもの店ね・・・」
Somchaiとの付き合いは長い、Farより5つ上の彼は、同郷ということもあり最初にタニヤで働いた時から妹みたいに面倒を見てくれた。何でも相談できる唯一の友達だった。
日本から帰ってから、今の店であるスクンビットのSoi33の店を世話をしたのも彼だった。ジュンイチは当初反対したが、飲むだけでデートはしないことで納得させた。
タクシーに乗り少し早めにに店に行くとタグチがいた。
「あら珍しい・・・どうしたの?日本じゃなかったの」
タグチと逢うのは半年ぶりだ。いつも忘れた頃ひょっこり顔を出す。
「久しぶりだね。飯でも食いにいくか?」
「ご飯なんで食べに行ったことないじゃない。いつもやるだけじゃない」
「こんなおばちゃんとまだやるの?(笑)」
そう話しながらFarは私服で席についた。
飲むだけといってもお客は結構誘ってくる。一晩10,000バーツと言って来る客もいたが、新しい客とは絶対にホテルには行かなかった。そこまでリスクを犯してジュンイチを失いたくなかった。Farがジュンイチを裏切るのはジュンイチより古い馴染みの客であり、Farの立場を理解している1人の客だけだった。その唯一の客がタグチだった。
タグチは性格があっさりした紳士だった。Farとはセックスだけの関係・・・決して感情を移入してこなかった。Farもタグチに無理は頼まなかった。それがむしろ友達感覚でお互いに心地良く、気がついたら10年も続いていた。
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▲ by Sukhumvit_Walker | 2008-11-24 18:13 | Thailand Fiction